最近のある晩、夕食のあと、息子がぽつりとこんなことを言いました。
「ぼく、おおきくなったらけんきゅうしゃになって、ママをたくさんつくるんだ!」
あまりに真剣な顔で言うものだから、最初は「ん?どういう意味?」と一瞬止まってしまいましたが、どうやら“クローン”のようなイメージらしく、パパと私は思わず顔を見合わせて、声をあげて笑ってしまいました。「ママ、ひとりでも大変だよ〜!」なんて言いながら、三人でしばらく笑い転げる夜になりました。本人はきょとんとしつつも、ニコニコしながら「だってママだいすきだから」と言ってくれて、心の奥がぎゅっとあたたかくなりました。
我が家では、夜の時間がとても大切なひとときです。お風呂をすませて、パジャマに着替えて、ベッドメイキングをしたあとは、親子三人でベッドに集まり、その日の出来事を話したり、絵本を読んだり、即興のお話を楽しんだりします。最近のお気に入りは「おばけの探検隊」や「まほうつかいのヒミツのカバン」。息子のリクエストに応えて、パパが登場人物になりきって声を変えながら話してくれるので、息子は目を輝かせて聴いています。その横で私は毛布をかけながらふたりを見守っていて、こんな時間がいつまでも続けばいいな、と毎晩思うのです。
パパは本当に頑張り屋さん。整体院でのお仕事をこなしながら、家でも家事をしっかり手伝ってくれます。掃除や洗濯、料理までこなすパパのおかげで、私は心にゆとりを持って子育てができています。そしてパパにはもうひとつ、大きな顔があります――ブレイクダンサーとしての一面です。実はパパはずっと前からブレイクダンスをやっていて、引っ越してきたこの街でも、スタジオに通って本格的に練習を続けています。今年でちょうど1年。技の練習に熱中したり、レッスンでは息子とストレッチをしてから家を出るのが習慣になりました。
息子にとっても、そんなパパは憧れの存在。『パパ、きょうも“くるんってやつ”できる?』『ぼくもおどりたい!』と、真似っこダンスをしては二人で大笑いしています。パパも『ちょっとずつ教えていこうか』なんて言いながら、息子の成長をそっと見守っています。
朝も、パパのやさしい「おはよう」で始まります。キッチンからは野菜の香りと、トースターの音。ママ特製の朝ごはんを囲みながら、今日の予定を話し合う時間は、毎日がちょっとしたピクニックみたいな雰囲気。『きょうはなにたのしいことあるかな?』『あしたはおやすみだよね!』そんなやりとりが、我が家のエネルギーの源です。
息子の目線で世界を歩くと、いつもとちがう景色が見えてきて、心がゆるんでいくのがわかります。
夜、ベッドで並んで眠るとき、息子がふと私の顔を見て「ママ、きょうもありがとう」と言ってくれる瞬間があります。パパがそっと背中をなでながら「ママの笑顔、最高だよな」と言ってくれたことも。あたたかい、やさしい、何気ない一言たちが、私の心の中にやわらかく積もっていきます。
息子の“ママをたくさん作る”発言は、私たち家族の会話に、今でも笑いと愛をもたらしてくれています。どんなに忙しくても、こんなふうに毎日を一緒に笑って過ごせることこそが、いちばんの幸せ。これからも三人で、笑いあって、支えあって、毎日を大切に積み重ねていきたいと思います。